豆知識

漢方の目で見る
子どもの体と健康

アトピー性皮膚炎

異物に過敏に反応しやすいアトピーを持つ人が、特定の食べものや異物に触れることで、その刺激によって起こる、慢性的なしっしんをアトピー性皮膚炎といいます。 これは、アレルギーの過敏反応による特質な湿疹です。

症状

乳幼児では数ヶ月以上、幼児から学童にかけては数年にわたって、がんこなしっしんが繰り替えし発症します。 一般に、赤ちゃんのときは顔の周辺から始まり、次第に首や手足にしっしんが現れることになります。 季節や環境によって増悪を繰り返すことが多く、激しいかゆみと浸出液のために眠れないほど重症なものから、わずかなしっしんが時々出るだけの軽症のものまで症状は様々です。

治療の視点

炎症の引き金になるアレルゲンを調べ、それを避ける生活を心がけます。アレルゲンは食べものであったりホコリやダニであったりと、人によっていろいろです。専門医できちんと検査を受けてアレルゲンを突き止めることが治療の第一歩となります。保湿剤で皮膚の乾燥を防いだり、夏場は時々シャワーで汗を洗い落とすといった皮膚のケアもこころがけます。 また、疲れや精神的なストレスも症状を悪化させる引き金になります。

▼西洋医学の眼
皮膚の乾燥を防ぐためにワセリンや尿素軟膏などの保湿クリームを使います。 アレルギー反応を抑えるためには、抗ビタミン薬や抗アレルギー薬を服用します。しっしんが軽症の場合はこれで経過をみますが、急性期の炎症が激しい場合は、ステロイドの外服薬をつかいます。 ステロイド概要薬は最も強いクラスのものから弱いクラスのものまでいくつかの段階があるので、症状によって使い分けます。 ステロイド外服薬は効果が期待できますが、長期間使い過ぎるとかえってしっしんが出来やすくなったり、細菌やウイルスが感染し易くなりますから、必ず専門医の指示に従って使うようにします。

▼漢方治療の眼
急性期、重症例には西洋医学を優先して症状を抑え、慢性期には漢方治療を中心に体質を整えるようにする方法が一般的な併用方法です。 ステロイド外服薬の減量をはかる目的でも使われます。 アトピー性皮膚炎は、症状にも幅があり、原因も人により様々で、根本治療が難しい病気です。

ここには、アトピー性皮膚炎にしばしば使われる処方を紹介しましたが、同じ処方が、一人には効果があっても、別の子どもに効果があるとは限りませんし、時にはかえって症状が悪化することもあります。 一人ひとりの症状に合わせた、慎重で根気強い治療が必要なのです。

よく使われる漢方治療

白虎加人参湯:赤みが強いしっしんで、かゆみも強い。口が渇き、水をよく飲むような場合に。

治頭瘡毒湯:乳幼期から学童期の顔面のじゅくじゅくしたしっしんに。

黄連解毒湯:赤み、かゆみの強いしっしんで、特に顔面の炎症をとる。

補中益黄湯:乳幼児の虚弱体質があるアトピーに。体質改善として。

柴胡清肝湯:幼児期から学童期の、皮膚が全体にざらざらした感じで、顔面、手足にしっしんがある場合に。

期耆建中湯:胃腸が弱く、虚弱な体質の子どもに。体質改善として。

消風散:比較的元気で、夏に症状が悪化するタイプに。

十味敗毒湯:化膿傾向があり、赤みはあまり強くないしっしんに。

コラム

親子関係とアトピー皮膚炎

アトピーは、精神的ストレスも大きく影響します。子どもの場合、母親の精神状態が反映して、それがストレスになって症状を悪化させていることもしばしばあります。漢方治療では親子関係も観察して必要に応じて気持ちを落ち着かせるための漢方薬をお母さんに処方することもあります。子どもの治りにくいアトピーは辛いものですが、くよくよしても始まりません。明るく、前向きに考えるように気持ちを切り替えることも、治療の大切なポイントなのです。